友人からの電話

2001年9月30日
先日、
小学校時代の友達のTから電話があった。

簡単な用が済んで、

T『じゃぁ、勉強頑張れよ。』
僕『おう、おまえもな。』
T『いや、俺は勉強しねぇ。』

ときた。

まぁ、やつのことだ。
「勉強頑張れよ。」と話を振ってきた時点でなんとなく、
「あ、こいつ大学受けないんだな」っていう気はしてた。
なにしろ、そんなやつなのだ。
昔から、ちょっと変わったところのあるやつだった。

僕『おまえ、大学いかねぇのか?』
T『あぁ、東南アジア行くわ。』
僕『東南アジア!?』
T『うん、東南アジア。』
僕『わはは、東南アジアかぁ。…放浪しちゃうの?』
T『うん、放浪しちゃう。』
僕『あはは・・・、そっかぁ。なんでまた?』
T『え〜、わかんない。』
僕『は?おまえが決めたんだろ?』
T『うん、自分で決めた』
僕『行って、どうするんだ?』
T『え〜、決めてない。』
僕『あはは、おまえなぁ…。そうかぁ。東南アジアかぁ。』
T『あぁ。』

その後、いろいろ話し、
『頑張れよ』といって、受話器を置いた。

Tか…。

話をするのは、ずいぶん久しぶりだが、
小学生の頃は、わりと仲のいい友人だった。

がさつで、細かいことは気にしない。
バカなようでも、自分なりに誠実に周囲を捉えている。
そんなやつだった。

自分とは、違うタイプの人間だったと思うのだが、
なぜか不思議に馬が合って、
色んな事をいっしょにやった。
ちょっといえないような馬鹿なことも。

あるとき、ふざけて僕をバットで殴りつけたTが
親と一緒に我が家に謝りに来たのをきっかけに、
親同士でも少々、親交があった。

そう、
今考えると、当時一番仲のよかった友人の一人が、奴であった。


中学校に入って、奴が野球にのめり込んでからは、
昔ほどは一緒に遊ぶことも少なくなり、
高校に入ってからは、ほとんど連絡をとってない。

そんな奴からの突然の電話であった。

気付いたら、
『バカだ、バカだ』と思ってたTも、そろそろ人生を真面目に考える年になり、
そして、出した結論が『東南アジア』だという。

なんだかよくわからない、不思議な気分になった。

おそらくは、嬉しかったんだと思う。

少なくとも、
『あえなくなる寂しさ』とか、
『自分にできない決断をした嫉妬』とかは
なかったような気がする。

会えないのなんて高校入ってからずっとそうだし、
自分にとっての大学受験も、安易に決めた面もあるとはいえ、
それなりの覚悟を持って臨んでいるつもりだ。
いまさら、別の決断をすればよかった、なんて
よわっちいことを言うつもりはない。

中学校で奴が野球部に入ったときや、
違う高校に進んだときよりも、さらに、
僕と奴とは、歩く道が別れてしまったな、
という思いはある。
でも、そんなの、あたりまえの話だ。
中学校を卒業するときに、わかっていたことだ。

だから、僕はきっと、うれしかったんだろう。

Tが、奴なりに考えて、
『自分を見つめ直す』なんて、似合わない理屈までこねだして、
自分のやりたいことを導き出した。

『放浪する』というが、
すむところはどうするのか、
お金はどうするのか、
危険はないのか、
など、問題点はたくさんあるだろう。

奴のことだ、行ってみれば何とかなる、と思ってるに違いない。
そういう状況に対応できるだけの力を身につけよう、と考えてるのかもしれない。

あのTが。

奴がそんなことを一生懸命考えているところを想像するだけで、
なんとなく笑えてくる。

そして、そんなことが、やけにうれしい。


最近、自分の周りのことで精一杯だが、

かつての友人たちも、
知らないところで確実に成長し、
それぞれの人生と向き合ってる。

少々、大袈裟だが、なんとなくそんなことを実感した。

自分も頑張らねば。


そうそう、奴は中学校時代、
ある日、髪型を坊主にしてきた。
あまりに突然の変化にみんな驚き、以降「修行僧」などと奴を呼んだものだ。
それでも一向に動じてなさそうな、彼の表情をふと思い出した。

突然の「坊主」。
今の僕と同じ髪型。

確かに、そんな彼には、東南アジアが似合う気がした。

 
…今度、Tに会うのはいつになるのだろう。

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